ウォッチ・ダッシュボード
本書は、日本が三つの目標、すなわち安い調達、守られた円、正常化した金利のうち二つしか保てないと論じる。そしてどれを諦めるかという選択は、わずかな数の指標に読み取れる。ここに掲げるのが、その指標である。
ペーパーバック、発売中。『円の囚人』(日本語版)、Prisoners of the Yen(英語版)。米国Amazonからは日本語版・英語版。
マトリクスで判定する指標
ドル円 4週間の変化率
—%
ドル円
-
日銀政策金利
1.25%
日本のコアCPI(前年比)
1.7%
10年物日本国債利回り
-%
国債 10年-30年スプレッド
—pt
米国債 10年-30年スプレッド
—pt
日経平均 60日高値からの下落率
—%
文脈 本書が論じるが、判定には用いない
日経平均株価
-
金(COMEX、1オンスあたりドル)
-
金 円建て(1オンス)
—
ビットコイン(ドル)
—
FRBと日銀の政策金利差
2.625%ポイント
日本の総債務
205% GDP
市場系列は日次の終値であり、15分ごとに更新している。政策金利と物価の計数は、各公表のあとに手で更新している。
相場を読む
各行が指標であり、各列がその指標の指し示す道である。なによりも二つを追うこと。円の変化率と、実質政策金利、すなわち政策金利からコアCPIを差し引いた値である。円の水準ではない。水準は信認と清算とを区別できない。どちらも円高として現れるからである。財政の姿勢が、その組み合わせをA、B、Cのどれに変えるかの振り子になる。
| 指標 | ケースA・財政再建 | ケースB・減価 | ケースC・財政従属 |
|---|---|---|---|
| ドル円 4週間の変化率(両側) | いずれの方向にも2%未満。政策の信認によって水準が保たれている | いずれの方向であれ2〜10%の持続的な動き | いずれの方向であれ10%以上。円安は介入と米国債売却を強い、円高はキャリー取引の巻き戻しを強いる |
| ドル円 介入後 | 堅調、かつ静か。ポジションの手仕舞いではなく規律によって得られた円高 | 金利差を映してじりじりと円安 | 金利ではなく介入で防衛。FIMAへの依存、資本移動の規制が現れる |
| 日銀の利上げ経路と消費者物価 | 利上げがインフレに追随あるいは先行 | 利上げが持続的にインフレに遅れる | 目標超えの物価にもかかわらず利上げが停止あるいは反転 |
| 10年国債利回りとターム・プレミアム | 信認の回復により圧縮 | 高いが秩序は保たれる | 無秩序な急騰、あるいは新たな利回り上限や買入れ指針 |
| 超長期国債の需要 10年-30年スプレッド | 過去10年の中央値0.77ポイント以下 | 軟調だが機能している | 1.37ポイント以上。過去10年の95パーセンタイルを超え、超長期債が見放されつつある |
| 米国債のデュレーション 10年-30年スプレッド | 過去10年の中央値0.44ポイント以下 | 日本ではなく米国の財政事情を映して推移 | 0.75ポイント以上。価格に頓着しない強制的な売りにより超長期債が劣後 |
| 財政の姿勢 | 基礎的財政収支目標が復活、補正予算が縮小 | 補正予算は大きいまま、債務比率の指標を維持 | 支出は維持され、かつ日銀がそれを賄わされる |
| 日銀と政府の関係 | 独立かつ協調的 | 静かに協調的 | 公然たる摩擦、独立性への圧力 |
| 実質賃金と消費者物価 | 正。圧力が緩む | 負。圧迫が続く | 大きく負。政治的な強制事象になる |
生値をシナリオ表に照らしている……
現在の読み 2026年9月24日。ケースB、変わらず。FRBは16日に25ベーシスポイント引き上げ、日本銀行も18日に7対2で1.25%へ引き上げた。適用は24日からである。双方が動いたため、政策金利差はサイクルの始点と同じ2.625ポイントに戻った。コアCPIは1.7%で、実質政策金利は−0.45%。日銀自身の見通しでは物価上昇率は2%をはっきりと上回っていく。利上げを続けてもなお後手にある。実質賃金は7月に前年比2.4%増で、1月から増加が続いており、この指標はBからAへ移る。ただし一つの指標で全体の判断は動かない。新しい金利が適用された最初の東京の取引は、利上げとは逆の方向に動いた。10年国債利回りは一時3.055%と約30年ぶりの水準に上がり、国債先物には大阪取引所のサーキット・ブレーカーが発動した。円は158円70銭前後で推移した。財務省の残存期間一定の10年金利は3.073%で引け、1日で3.1%上昇したが、5%の目安には届いていない。圧力の多くは米国から来ており、米国債10年利回りは5.1%を超えている。円は4週間で0.4%の円高で、9月8日に152円90銭をつけたあと、落ち着いた範囲に戻っている。日経平均株価の終値は6万5514円で、18日を495円上回った。円キャリートレードの巻き戻しに伴う急激な円高は起きていない。財政は拡張的なままで、令和9年度の概算要求では国債費が17%増えている。ケースCへ読みを動かす兆候は、いまも円安ではない。利回り上限や買入れ指針の再導入、あるいは4週間で10%を超える円の変動である。日本銀行の次の決定は10月30日である。